研究課題
結核菌感染に対するワクチンとしては、BCGが60年以上前から用いられている。しかし、BCGの乳幼児粟粒結核に対する有効性は確認されているが、成人の肺結核に対する有効性は疑問視されている。そこで本研究は、結核菌が潜伏期/再燃時特異的に発現する遺伝子産物を標的抗原として、結核菌の再燃を抑制する新規ワクチンの開発を計画した。BCGを初回免疫に、抗体潜伏期ワクチンを追加免疫に用いることで、成人の肺結核をも抑制できるワクチン戦略を樹立することを目的としている。今年度の成果としては、潜伏期の結核菌が発現するDosR regulon蛋白(48種類)および結核菌の再活性化に関与するResuscitation promoting factor蛋白(5種類)を候補抗原として、DNAワクチン・ライブラリーの作製を完了した。また、免疫応答測定に用いる抗原蛋白を調製するため、抗原遺伝子の蛋白産生用ベクターへの組み込み作業を現在遂行中である(約6割を終了)。これまでに準備できた試料を用いて、一部の候補抗原についてはマウスに免疫を施してスクリーニングを開始したが、これまでに強い免疫応答を惹起できるものを得るには至っていない。上記の候補抗原に加え、結核菌の休眠期に高発現するMycobacterial DNA-binding protein 1(MDP1)に対する細胞免疫応答をマウスで検討し、C57BL/6の最小CD8^+T細胞エピトープおよびBALB/cの最小CD4^+T細胞エピトープをそれぞれ1つ決定した。上述したワクチン候補抗原の探索と平行し、将来同定できた候補抗原蛋白を用いて、より効率良く免疫応答を誘導すべく、新たな抗原デリバリーシステムとしてオリゴマンノース被覆リポソームを開発した。
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