研究概要 |
いわゆる次世代DNAシーケンサは数時間で100Mb以上の配列を決定する能力をもつ。我々は次世代DNAシーケンサを用いた病原細菌の迅速同定と性状解析を目指したシステムの構築を行っている。本研究では、急性下痢症の糞便検体を次世代シーケンサを用いて解析し、病原体の直接検出を試みた。 急性下痢症を発症した患者から発症4日目(発症時)および3ヶ月後(回復時)に糞便を採取し、-80度で凍結保存した。これら糞便検体からDNAを抽出し、シーケンサGS20(454Life Sciences)に供した。得られた塩基配列のBLAST解析を行い、トップヒットしてきたDNA配列の由来する生物種をNCBI taxonomyデータベースより検索した。 下痢発症時糞便より抽出したDNAから得られた96,941配列のうち156配列がCampylobacter jejuni由来のDNA配列にトップヒットしたのに対し、回復時検体については得られた106,327配列のうち本菌にトップヒットするものはなかった。C. jejuniをターゲットとしたPCRおよび増菌を含む培養検査の結果、下痢発症時糞便中にC. jejuniの存在が確認された。 本研究では、次世代シーケンサを用いることにより下痢患者糞便中の病原細菌を直接検出することができた。本法は原理的に標的病原体の種類にこだわらない検出法であり、多様な病原体を単一の原理で検出できる可能性がある。また糞便のみならず喀痰や血液などさまざまな臨床検体への応用が期待できる。今後より多くの臨床検体を供試することにより、本法の有効性を検討していきたい。
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