研究課題
ヘリコバクター・ピロリ菌はヒトや実験動物の胃に慢性感染して、胃潰瘍・慢性萎縮性胃炎を誘起するだけではなく、胃ガンの原因細菌と考えてられます。これまで、ヘリコバクター・ピロリ菌の病原因子、特に上記疾患の関連因子については、集中的に解析され、多様な因子の役割が明らかにされてきました。しかし、同菌の排除に関わる宿主側の因子については解明が未だに進んでおりません。当該研究の目的は、慢性感染のメカニズムを宿主応答から解明するものです。今年度は、宿主のヘリコバクター・ピロリ菌に対する初期生体防御応答メカニズムについて解析致しました。特に、宿主の重要な生体防御因子の一つであるInterleukin(IL)-18やIL-1βの分泌メカニズムについてマウス感染モデルを用いて検討致しました。その結果、IL-18やIL-1βの分泌には、カスパーゼ1酵素の活性化と、それに必要なNalp3インフラマゾームを構成するASCタンパクが重要であることが明らかになりました。事実、ASCを欠損したマウスにヘリコバクター・ピロリ菌を経口接種すると、野生型マウスに比べて、感染4ヶ月後の胃における細菌数は有意に高値でした。更に、胃の多核白血球やリンパ球などの浸潤度は、逆に、軽減していました。一般に、IL-18は細菌の排除に必須のインターフェロンγ(IFN-γ)の産生を誘導し、IL-1βは好中球の遊走や活性化を促進します。ASC欠損マウスでは、血清中あるいは胃局所におけるこれらのサイトカインの発現・分泌が低下していました。そればかりでなく、感染胃局所におけるIFN-γの発現も低下していました。以上の結果から、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると、宿主はASCを用いてカスパーゼ1を活性化して、同菌の排除に必要なIL-18やIL-1βを分泌し、局所に多様な白血球の遊走とこれらの細胞の活性化を誘導し、その結果殺菌に至る可能性が示唆されました。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (10件)
J. Hepatol. (In Press)
J. Hepatol. 48
ページ: 237-245
Microbial. Immunol. 52
ページ: 297-304
J. Dermatol. Sci. 51
ページ: 19-29
J. Histochem. Cytochem. 57
ページ: 327-338
臨床免疫・アレルギー 50
ページ: 147-153