研究課題
予防エイズワクチン開発研究においては、安全性の確立ができていない弱毒化生ワクチンで唯一、サルエイズモデルでの十分な有効性が報告されている。本研究では、生ワクチンによる持続感染成立抑制機序を明らかにすることを目的として、サル免疫不全ウイルス(SIV)感染サルモデルにおいて、新たに考案した限局複製型生ワクチンのSIV複製抑制効果を解析した。このワクチンは、SIV分子クローンDNAのenv領域を、ヒト細胞にレセプターを有しないフレンドマウス白血病ウイルス(FMLV)env遺伝子に組換えたFMSIV DNAと、FMLVレセプター(mCAT1)発現DNAとを共接種するもので、FMLVレセプター発現DNAが取り込まれた細胞に限局したFMSIV複製を期待するものである。このワクチン接種を1カ月間隔をおいて計3回行ったところ、1週間隔で接種した時ほどのワクチンウイルスの複製、CTL誘導、SIV防御効果が認められず、本ワクチンの効果には、ワクチンウイルスの複製が必須であることが確認できた。このワクチン接種サル4頭へのSIVチャレンジ実験では、1頭はSIV複製制御に至ったが、残り3頭ではSIV複製制御には至らず持続感染が成立した。しかし、感染急性期にワクチン抗原(Gag・Pol・Vif・Vpx)特異的CTLの優位な反応が認められ、興味深いことに、SIV非ワクチン抗原特異的CTL反応の誘導が遅れる傾向が認められた。感染急性期の血漿中ウイルスゲノムの塩基配列解析もこの結果を反映し、ワクチン抗原コード領域の変異が多い傾向を示した。これらの結果は、ワクチンにより、HIV/SIV曝露後のCTL反応の優位性のパターンが変化することを示すものであり、CTL誘導ワクチンの抗原選択に重要な情報を提供するものである。
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