研究概要 |
HIV-1感染感受性には明らかな個人差があり、HIV-1に繰り返し暴露されながらも感染を免れている少数の人々が存在する。本研究では、非加熱血液製剤を投与されながらも感染を免れた血友病の非感染者47名とHIV-1感染血友病患者94名の約1万箇所の一塩基多型についての遺伝子型を、Affymetrix社のHuman mapping10K Arrayを利用して決定し、HIV感染症との関わりが明らかなものからHIV感染症との関連が金く不明なものまで、ゲノムワイドに網羅的な解析を行った。その結果、1番から22番染色体上の9,901箇所の多型のうち非感染者では99.8%、感染者では99.6%の遺伝子多型を決定できた。674カ所の遺伝子型については検討した集団内での多型は検出されず、以降の解析から除外した。解析に用いた9,227箇所の多型のうち、感染者と非感染者の聞でP<0.01の危険率で頻度に差のあった多型は127カ所、P<0.001の危険度の差は13カ所、P<0.0001の差は4カ所、P<0.00001の差は2カ所あり、相関が実際には存在しない場合に予想される擬陽性の数よりも多く有意差のある多型が観察された。特にP<0.00001の危険率でも有意差を認めた二カ所の多型は、9,227回の多重検定をBonferroni補正してもまだP=0.034とP=0.0004の有意差が認められ、これらの多型とHIV-1感染抵抗性あるいは感受性との間に真の相関が存在する可能性が強く示唆された。これら二カ所の多型はいずれも既知の遺伝子の間に存在するため、近傍の遺伝子内への連鎖不平衡を現在解析している。近傍の遺伝子との間に連鎖不平衡が認められたら、その遺伝子産物がHIV-1の伝搬や増殖に関わるか否か、あるいはHIV-1に対する免疫反応に影響するか否かを検討する予定にしている。
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