研究概要 |
体表面を覆う「表皮」、管腔臓器の粘膜を構成する「上皮」など、外界と接する組織はtight junctionを形成する極性細胞で構成されている。すなわち、ウイルスにとって、極性上皮細胞に感染し、増殖する能力を持つことは、効率よくわれわれの体内に侵入し、さらに増殖した後、再び外界へと出芽・放出し、新たな個体に効率的に伝播・感染するために不可欠な能力である。しかしながら、極性上皮細胞におけるウイルス増殖の機構については、あまり研究が進んでいない。極性上皮細胞でのウイルス増殖機構を明らかにすることは、ウイルスの病原性や伝播を理解する上で必須であり、本研究では、特に最近、社会的問題になっている麻疹ウイルスとインフルエンザウイルスを取り上げ、それらのウイルスが極性上皮細胞で効率よく増殖する分子機構を明らかにすることを目的としている。 昨年度までの研究によって、宿主細胞が発現する転写抑制因子Snailを発現すると極性上皮細胞の麻疹ウイルスに対する感染性が消失することを明らかにした。Snailを、もともと発現のない細胞に恒常発現させ、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、細胞接着やtight junction形成に関与する分子(CEACAM6,CD9,CDH1,CLDN3,CLDN7,CLDN8)や膜タンパク質輸送に関与する分子(RAB17,RAB25,RAB38,MAL2等)の発現が、Snailによって制御されていることが明らかになった。
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