本研究では、HIV-1特異的CTLによる逃避変異の選択がどのような機序で起きるのかを明らかにし、CTLにより生じた逃避エピトープがHIV-1感染者集団の中でどのような機序で集積されるのかを解明する。さらに、逃避変異が新たなHIV-1感染者の抗HIV-1免疫に及ぼす影響を明らかにし、これにより、現在流行している変異性に富んだにHIV-1に対するワクチン開発の戦略を検討する。具体的には、1)逃避変異の選択と特異的CTLのHIV-1増殖抑制能との関連性、2)CTLによる免疫圧を規定する因子の同定、3)逃避変異のHIV-1感染者集団での蓄積の機序、4)逃避変異に対する免疫反応、について明らかにする。その結果平成20年度は、以下のような成果を得られた。 1.強いHIV増殖抑制能をもったPo1283特異的HLA-B*5101拘束性CTLが選択する逃避エピトープを明らかにし、その変異が世界9つのコホートでの解析で、HLA-B*5101をもった患者で蓄積していることを明らかにした。さらにこの逃避変異がHLA-B*5101をもっていない患者にもその逃避変異が蓄積していることから、現在流行しているHIV-1はCTLから逃避しやすいものに変異していると考えられた。 2.Nef84特異的CTLとNef73特異的CTLは、HLA-A*1101をもった患者の中で高頻度で確認できた。この両方のCTLが、In vitroで強いHIV-1増殖抑制能を示すことを明らかにした。さらにNef84特異的CTLにより選択される逃避変異エピトープを明らかにしたが、一方Nef73特異的CTLは逃避変異を選択できなかった。
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