研究概要 |
本研究では、HIV-1特異的CTLによる逃避変異の選択がどのような機序で起きるのかを明らかにし、CTLにより生じた逃避エピトープがHIV-1感染者集団の中でどのような機序で集積されるのかを解明する。さらに、逃避変異が新たなHIV-1感染者の抗HIV-1免疫に及ぼす影響を明らかにし、これにより、現在流行している変異性に富んだにHIV-1に対するワクチン開発の戦略を検討する。具体的には、1)逃避変異の選択と特異的CTLのHIV-1増殖抑制能との関連性、2)CTLによる免疫圧を規定する因子の同定、3)逃避変異のHIV-1感染者集団での蓄積の機序、4)逃避変異に対する免疫反応、について明らかにする。その結果平成22年度は、以下のような成果を得られた。 最近の300名のHIV-1感染者の変異解析をおこない、HLA-associated polymorphismを明らかにした。現在この解析から、逃避変異として選択されてくるものを同定している。一方、逃避変異として知られているHLA-A*24:02拘束性のGag24特異的CTLの解析を行い、この逃避変異2Rに新たに反応するCTLを明らかにした。しかしこの2Rを持ったウイルスの増殖を抑制する能力は、変異を持っていないウイルスの増殖する能力と比べて弱く、逃避変異を持ったウイルスの抑制は限定的であると考えられた。最近3年間に新たにHIV-1の感染が確認された患者のHIV-1特異的CD8T細胞を調べるために、Nef, Gag, Pol領域をカバーする11-merのオバーラップペプチドを合成し、これを用いてエリスポットアッセイで調べた。その結果低HIV-1ウイルス量、CD4数にPolおよびGag特異的CD8T細胞数が相関していることが明らかになり、HIV-1の抑制に関与していると考えられた。
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