本研究はEBウイルス潜伏感染状態からウイルス再活性化したときに起きるイベントをウイルスと宿主細胞の両側面からその分子機構について解析した。 (1)EBV潜伏感染からの再活性化の分子機構:EBウイルスの再活性化メカニズムについてより詳細かつ網羅的に解析するため、cDNAライブラリを用いたスクリーニングを遂行し、BZLF1のプロモーターを活性化する宿主因子の探索を行った。これまでに2万個以上のクローンを精査し、11のヒットを得た。ヒットにはMEF2BやKlf4、いくつかのb-Zip型転写因子が含まれていた。これらの因子、もしくはその類縁の因子がBZLF1の転写を活性化することがすでに報告されていたことから、本スクリーニングの信頼性の高さが示された。他にはHypoxia-Inducible Factor(HIF)-2αがBZLF1プロモーターを活性化する因子として同定された。興味深い新規の知見であったため、この因子に着目して詳細な解析を行った。結果、低酸素様状況においてEBウイルス再活性化が促進されること、HIF-1αよりHIF-2αの方が効果が高いらしいことを明らかにし、またさらにBZLF1プロモーター上にHIFの結合サイトを同定した。以上から低酸素状況がEBウイルス再活性化を促進することが明らかになった。 (2)ウイルスゲノム複製分子機構の解明:Epstein-Barr virus(EBV)のポリメラーゼ付随蛋白質として知られているBMRF1蟹白質head-to-head結合を阻害した変異C95E、ポリメラーゼ伸長促進能を欠いた変異H141F、DNA結合とポリメラーゼ伸長促進能を欠いた変異R256E、tail-to-tail結合を阻害した変異C206Eを持つEBV BAC DNAを作成し、それぞれ潜伏感染HEK293細胞を樹立した。これらミュータントのウイルス産生感染に及ぼす影響について解析し、tail-to-tail結合を阻害したC206Eはウイルス産生感染に大きい影響を与えたことから、BMRF1蛋白質がリング構造をとることが、ウイルス複製に重要であることがわかった。
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