水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は、幼小児期に初感染し、水痘を引き起こし、治癒後も宿主の神経節に潜伏感染する。また、ウイルスの再活性化時には帯状疱疹を発症することが知られている。今回、我々は、VZVの病原性発現機構を解明するため、ヘルペスウイルスに保存されているVZVがコードするウイルス粒子糖タンパクであるglycoprotein Mに着目し、ウイルスの細胞間伝播におけるその役割を解析した。今回我々は、gMが、別のウイルス粒子糖タンパクであるglycoprotein N(gN)と複合体を形成する事により成熟した糖タンパクとなり、VZV感染に特徴的な多核巨細胞形成を伴った細胞間伝播に関与していることを見いだした。さらに、我々は、このgNとの相互作用に機能している2つのアミノ酸部位を明らかにした。また、この2つのアミノ酸の変異ウイルスでは多核巨細胞形成を認めなかった。 ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)は、免疫担当細胞に感染するといった興味ある特徴を示す。ウイルスエンベロープには、HHV-6に特異的な糖タンパク(gQ1およびgQ2)が突き刺さっている。以前我々はHHV-6感染細胞においてgQ1およびgQ2は、gH/gL複合体とさらなる複合体を形成すること、さらに本複合体がHHV-6宿主レセプターヒトCD46のリガンドであることを明らかにした。しかし、gQ1の輸送にはgH/gLが本当に必要であるか、またヒトCD46への結合にはgH/gL/gQ1/gQ2複合体形成が必要であるかに関しては不明であった。今回、我々は、一過性の発現系を用いてgQ1の成熟には、gQ2に加え、gH/gL複合体が必要であること、また、ヒトCD46への結合にはgH/gL/gQ1/gQ2複合体の形成が必要であることを見いだした。
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