研究課題
本研究は、Tリンパ球の胸腺内分化選択機構の分子理解を大きな目標に、分化途上のTリンパ球が胸腺微小環境の構築に必須であることに着眼した胸腺上皮細胞刺激因子の同定を行い、更に胸腺上皮特異的機能分子の発現を指標にした皮質上皮細胞と髄質上皮細胞の分岐機構の解析へと進むことで、Tリンパ球レパトア選択を担う胸腺微小環境の多段階構築機構を分子レベルで解明することを目的とした。平成22年度の研究成果としては、まず、胸腺髄質上皮細胞の産生するケモカインXCL1による胸腺内樹状細胞の髄質中央部への誘引が、胸腺における制御性T細胞の産生に重要であるとともに、自己免疫疾患原因分子のひとつAireによって制御されることが明らかになった。また、胸腺皮質上皮細胞に特異的に発現されるβ5t鎖を含む胸腺プロテアソームによるタンパク質分解が、CD8T細胞の効率よい正の選択をひきおこすペプチドークラス1MHC複合体の産生に必要であり、その結果として有用Tリンパ球レパトアの形成と有効な生体防御に必要であることが明らかになった。更に、胸腺プロテアソーム構成鎖β5tの遺伝子座にCreを組換えることで皮質上皮細胞特異的に遺伝子を改変させるマウスの作出をほぼ完了するとともに、ケモカインCCL21の遺伝子座に蛍光タンパク質をコードする遺伝子を組換えることでCCL21を発現する髄質上皮細胞特異的に蛍光検出するマウスの作製を進めた。これら新たな材料を用いることで今後、胸腺皮質上皮細胞と胸腺髄質上皮細胞の分岐機構の解明に挑む。
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