研究概要 |
本研究は,電子タグをはじめとした各種個体認証技術とセンサー技術の組み合わせにより,患者や医療機器の状態をリアルタイムに検出・分析することを通じて,ユビキタスネット技術が医療安全向上へ寄与する事を目的とした.本院では既に,パッシブ型電子タグを注射薬の実施時認証に活用し,業務効率と医療安全の両面に効果を上げているが,本研究では動きのある人の活動のモニタリングに利用するためにアクティブ型電子タグを利用した.市販のアクティブ型電子タグに改良を加え,3軸加速度センサーを内蔵した上で様々な動作の際のログを取得・分析した,アクティブ型電子タグの位置情報を統合的も活用し,どこで,だれが,どのような状態なのかを検出した.ただし,人の行動を無条件にセンシングするのはプライバシー保護の観点から大きな問題も内包する.そこで,前述の3軸加速度センサー情報により,定められた閾値を超え,医療従事者に何らかの情報提示が必要な場合のみ効果的な警告を発するようなシステムが実現可能かどうかを主眼に,検討を行った,その結果,デバイスを用いて閾値を超えた衝撃をリアルタイムに検知し,位置情報と合わせて通知する仕組みは直ちに実現可能と思われた.ただし,装着位置によって検出能に差があり,腕や足への装着では素早い通常動作との識別が困難なケースも多かった,これらをさらに識別するには衝撃時の加速度の立ち上がりなどの時系列データも分析する必要があるが,それにはサンプリング間隔を相当短くする必要があり,かつ,自律発信を常時継続しなければならないため電池消耗が著しく,現状では医療現場での利用は非現実的と思われた.ただしこの点は,ジャイロセンサーを利用して傾き情報を加味し,患者の状態に応じて閾値を的確に制御できれば解決できる可能性もあり,今後の課題と思われた.
|