研究概要 |
1)肝細胞癌スクリーニング検査の診断特性に関する文献的検討(systematic review) 日常診療において肝細胞癌スクリーニングに用いられる腫瘍マーカ検査および超音波検査の診断特性について文献的検討を行った。MEDLINE、EMBASEから関連論文の抽出ならびにそれらの論文の引用文献からも論文の抽出を行い、α-fetoprotein(AFP:31論文)およびそのL3分画(7論文)、des-γcarboxy prothrombin(DCP:PIVKA2:16論文)、超音波(US:5論文)および腫瘍マーカの組み合わせによる診断特性(感度・特異度)について求めた。その結果、感度、特異度のプール値は、それぞれAFP20ng/mlで0.62、0.80、AFPL310%で0.32、0.93、DCP40ng/mlで0,58、0.94,AFP+DCP+L3併用で0.83、0.90、USで0.59、0.90であった。 2)定期的受診群での発見時の腫瘍径等の特性についての検討 肝細胞癌で入院となった症例について、外来での受診状態によって定期受診群、非定期受診群の2群に分類し、その発見時の腫瘍径や腫瘍個数についてプレリミナリーな検討を行った。その結果、3cm以下を小肝細胞癌とすると定期受診群の78%は小肝細胞癌であったのに対して非定期群は45%と統計的に有意な差を認めた。 3)肝細胞癌の治療予後の推定モデルの構築 スクリーニングによる肝細胞癌発見時の治療別(肝切除術、経皮的局所焼灼術、化学的動脈塞栓術、抗がん剤動注療法)の予後モデルをマルコフモデルを用いて作成した後、それぞれのモデルの妥当性について自験例および全国原発性肝癌追跡訓査の生存率と比較して検証を行った。その結果、作成したモデルにて十分な予測が可能であることが示され、しかも、日本の平均的な治療予後と良く相関したことから一般性の高いスクリーニングモデルの構築を行うための基盤ができたと考える。
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