研究概要 |
1. HCV関連肝細胞癌の自然歴モデルを基にした判断モデルの作成と結果 HCVを基盤とした肝細胞癌は、慢性肝炎、肝硬変を基盤として線維化が進行した段階で一定の確率で発生するが、その後の腫瘍増大に対して腫瘍増殖モデルを適用し、ある一定の大きさ(5cm)から一定の確率で腫瘍死する自然歴のMarkovモデルを作成した。その上で、ある程度の大きさになった肝細胞癌に対するスクリーニング検査や他の目的での検査による偶然の発見あるいは、症状の発現からの発見、および、発見時の状態(腫瘍径)による治療選択とその予後と、肝細胞癌の症状発現後も治療もせずにそのままの転帰を追う選択肢を有する判断モデルを作成した。 そのモデルを用いて腫瘍増殖モデルとして単純指数関数(Exponentia1)モデルとGompertzモデルを比較した結果 1. 1cm以上の腫瘍増大はGompertzモデルは単純指数関数モデルと比較して遅くなった。 2. スクリーニング群と偶然または症状による発見群(lncidental群)と比較した費用対効果の結果では、単純指数関数モデルではスクリーニング群はlncidental群に比較し費用対効果が十分(発見時の腫瘍径の正規分布を前提とした増分費用対効果比290万円/QALYs)であったが、Gompertzモデルでは高額(前記前提での増分費用対効果比2750万円/QALYs)となった。 II. 肝細胞癌症例の後ろ向き調査による腫瘍マーカの診断能の検討 山口大学および天理よろづ相談所病院でHCV関連、肝細胞癌と診断された症例の中で、外来で1年以上にわたりフォローされた患者を対象に、1年以前の最古のデータを陰性コントロールとした腫瘍マーカ(α-fetoprotein : AFPおよびDes-γcarboxy prothrombin : DCP)の診断能について検討した結果、単独の感度、特異度はそれぞれ、AFP20ng/mlで0.50、0.61、DCP40mAU/mlで0.46, 0.92であり、また、その組み合わせでは、それぞれ0.68,0.57であった。さらに、ヘモグロビン(Hb)や乳酸脱水酵素(LD)などの一般検査を加えた多変量解析では感度0.87および特異度0.74、ROC曲線下面積0.86と改善し、腫瘍マーカ以外の検査も診断能向上に貢献することが示唆された。
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