研究課題
本研究は、現在日本で進行中の代表的な大規模コホート研究の1つであり、開始時40-79歳の者約11万人中65歳以上の者約3万人、と高齢者を多く含むJACC Study(the Japan Collaborative Cohort Study)を用いて、後期高齢期・超高齢期に達することに関連する生活習慣を検討することを目的としている。今年度は、コーヒー摂取と総死亡、ならびに社会における役割と総死亡との関連を検討した。1. コーヒーは世界中で広く飲用されているが、その中には健康に害を与えるものがある一方、含まれている抗酸化物質によってがんや炎症を抑制する効果もあると考えられている。今回の検討では、男では総死亡のリスクはコーヒー摂取量が増えるほど下がり、女では4杯以上摂取群では1-3杯の群に比べややリスクが上昇するU-shapeを示したことから、少なくとも身体に悪い影響を与えているものではないと考えられた。また、開始時の年齢による効果の差はほとんど見られなかった。2. 社会の中で様々な役割を担うことはストレスである一方、やりがいや社会とのつながりと関係する。日本では、婚姻率、出生率とも低下し、逆に働く女性は増加している。そこで、配偶者、親、職業人としての役割に着目し、総死亡との関連を検討したところ、役割がないものはあるものに比べ死亡リスクの増加を示した。さらに、研究開始時の年齢で全体を2分したところ、男女とも年齢の若いグループ(40-64歳)のリスクが年齢の高いグループ(65-79歳)よりも高い結果であった。役割を通じた社会とのつながり、生きがいなどが関連して、役割があることが健康に良い影響を与えていると考えられた。JACC Studyでは死亡・転出情報の追跡を2009年末までで終了し、今後はデータのまとめに入る予定である。関係諸施設と事務局との情報のやり取りには個人識別情報は外してIDを用いて行う。
2: おおむね順調に進展している
JACC Studyとして順調に生活習慣等と各種死因別死亡との関連を検討し、さらに高齢者を対象とした関連の検討も実施している。しかし、今までのところベースラインデータを用いた解析を実施しているのみで、生活習慣の変化(JACC Studyでは5年後のデータが一部の対象者で利用可能)については検討できていない。
来年度初めには2009年末までの追跡情報を追加したデータセットが完成する。そのデータセットを用いて、高齢に達することに関連する生活習慣などに関する検討を行う。
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Eur J Epidemiol
巻: 26 ページ: 285-293
10.1007/s10654-011-9548-7
Eur J Public Health
巻: (in press)
10.1093/eurpub/ckr194
http://www.aichi-med-u.ac.jp/jacc/index.html