本研究は、日本の代表的な大規模コホート研究の1つであるJACC Study (the Japan Collaborative Cohort Study)を用いて、後期高齢期・超高齢期に達することに関連する生活習慣を検討することを目的とした。今年度は、主に循環器系死亡に着目し検討した。 1.通常、食事は単品ではなく食品を組み合わせていることから、食品摂取の組み合わせに着目し、関連を検討した。その結果、野菜パターンスコアが高いと女性の総循環器疾患死亡リスクが、乳製品パターンスコアが高いと男女とも脳卒中リスクが低い結果が得られた。動物性食品パターンとは特に関連を認めなかった。 2.塩分摂取が多いことは高血圧を介して、脳卒中のリスクとなる。今回、実際の摂取量ではなく、塩分の好みとの関連を検討したところ、男女とも塩分の多い食品(塩辛、塩魚、佃煮、漬物など)を好むものほど脳卒中リスクが高いことが明らかとなった。さらに飲酒量と組み合わせると、塩分が多いものが嫌いかつ非飲酒である者に比べ、塩分が好きかつ2合以上飲酒の場合には、脳卒中死亡リスクが約2倍に増加する結果であった。 3.複数の生活習慣(果物、魚、乳製品からのカルシウムの摂取、身体活動、適度なBMIを維持すること、過度の飲酒を控えること、 喫煙しないこと、適度な睡眠時間を取ること)の組み合わせにより、循環器疾患死亡リスクを検討した。その結果、男女ともすべての良い習慣を実行している群では、実行していない群に比べ、男性で1/3、女性で1/4にリスクが低下することが明らかとなった。 以上、生活習慣の基本である食事あるいは複数の生活習慣の組み合わせと循環器系疾患との関連を明らかにした。JACC Studyでは死亡・転出情報の追跡を2009年末までで終了し、解析用データセットを確定し、今年度はデータのまとめを開始した。
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