研究概要 |
本研究では、麻薬性鎮痛薬感受性個人差の遺伝子メカニズムの解明を目的としている。平成21年度は、3年計画の2年目として、下顎骨切り術サンプルの収集を進めるとともに、多型判定、鎮痛薬感受性との関連解析を行った。サンプル収集では、合計300症例の下顎骨切り術の検体(臨床データおよびゲノムDNAのセット)を収集した。多型判定では、下顎骨切り症例230例に関して、イルミナ社製のゲノムワイド遺伝子多型解析を行った。膨大なデータであるためゲノムワイドの統計学的な解析は終了していないが、一部の候補遺伝子多型に関しては関連を見出した。まず、ミューオピオイド受容体遺伝子に関しては、その3'非翻訳領域を中心に存在する連鎖不平衡ブロックが鎮痛薬感受性と関連することを見出した(Fukuda et al., Pain, 2009)。また、G蛋白質活性型内向き整流性カリウム(GIRK)チャネルに関して、GIRK2遺伝子の多型が鎮痛薬感受性(Nishizawa et al., PLoS ONE, 2009)、GIRK3遺伝子多型が覚醒依存脆弱性と関連することを見出した。さらに、鎮痛薬の動態に関与するトランスポーターであるABCB1遺伝子に関しても、その遺伝子多型の一つが鎮痛薬感受性と関連することを見出した(Kobayashi et a., Acute Pain, 2009)。本結果および本研究で得られたサンプルとデータは、患者個々人の遺伝子に合ったテーラーメイド疼痛治療を実現する上で、重要な基盤であると考えられる。
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