研究課題/領域番号 |
20390166
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
登 勉 三重大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60106995)
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研究分担者 |
中谷 中 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (80237304)
高尾 仁二 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (30263007)
白石 泰三 三重大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30162762)
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キーワード | MTAP / 治療選択遺伝子検査 / CYP3A5 / 脱メチル化剤 / メチル化 / 遺伝子発現抑制 |
研究概要 |
悪性腫瘍にも個性があり、同じ病名であっても遺伝子レベルでは微妙に違っていることが明らかになってきた。本研究課題においては、癌に特有な変化(欠失)を示す遺伝子Methylthioadenosine Phosphorylase(MTAP)を標的にした化学療法の開発を最終目的としている。 今年度は、治療選択遺伝子検査の有用性を、生体肝移植後の免疫抑制療法で検証した。さらに、MTAP欠損癌細胞にMTAP発現ベクターとmockベクターを移入し、それぞれにおいてメチル化がどのように変化するかを検討した。治療選択検査はcompanion diagnosticsのことであり、治療薬と診断薬の一体化開発という新しい概念のもとに提唱された。既に、EGFR遺伝子の変異とgefitinibの効果が相関することが報告されているが、それぞれの癌に特有な遺伝子変化を標的にした治療薬の開発は製薬企業の重要な戦略となっている。タクロリムスやシクロスポリンによる免疫抑制療法では、チトクロームP450のうちのCYP3A5の多型が薬剤選択に重要であり、CYP3A5*3では、タクロリムス少用量で有効血中濃度を得ることを明らかにした。 一方、MTAP(-)A549細胞とMTAP(+)A549細胞を脱メチル化剤で4日間処理した後にメチル化剤無添加培養液に移し、これら二つの細胞ではメチル化がどのように変化するかを検討した。普段はメチル化されているが、脱メチル化剤処理で発現が亢進するTKTL1遺伝子と脱メチル化剤で影響されないGAPDH遺伝子の比を経時的に観察した。TKTL1/GAPDH比はMTAP(+)細胞に比べMTAP(-)細胞で低下し、メチル化が促進されることを示唆する結果であった。 これらの結果は、治療選択のために遺伝子検査が重要であることを示すとともに、MTAP(-)癌細胞ではメチル化により多くの遺伝子の発現が抑制されていることを初めて示唆した。
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