もし、血球DNAのメチル化の程度が各臓器のメチル化の程度を反映するとしたら、血球DNAのメチル化をがんリスクの生体指標として新規がん感受性診断に利用できる可能性がある。材料として、性・年齢をマッチさせた胃がん患者と健常者の血球DNA各300例を用いた。予備的に検討した複数の遺伝子の中から選んだ遺伝子Aについて、メチル化をTaqManプローブを用いた定量的PCR法で解析した。胃がん患者のメチル化の平均は5.25%、健常者の平均は4.56%で胃がん患者の方が高かった(P=0.071)。全症例についてメチル化に影響する因子を、5%区切りで調べると、年齢が上がるにつれて有意に5%以上の例が増えた。さらに胃がん患者についてのみで調べると、高齢、喫煙歴有りで5%以上の例が有意に多かった。 胃ではHelicobacter pylori(Hp)菌感染によりDNAメチル化が増えることが報告されているので、血清中のHpに対する抗体値を測定し、メチル化の程度との関連を調べた。胃がん患者では健常者よりHp抗体陽性者が多かった。しかし、胃がん患者と健常者の各々で、Hp抗体陽性者と陰性者の間でメチル化の程度に差は見られなかった。 以上より、血球DNAにおける遺伝子Aのメチル化は胃がんの生体指標となる可能性が示され、新規がん感受性因子としてさらに他の遺伝子のメチル化程度を解析する予定である。
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