研究概要 |
アスベストの発癌に関連する免疫動態の解明として,アスベスト曝露が全般的に免疫担当細胞に対して,どのような影響を及ぼし,かつそれが発癌という観点にてそこに関与するか,という解明という視点で解析を進めているが,そのためには腫瘍免疫が減衰するということが,最も妥当性があると思われる。その観点からの観察としてはまず昨今話題の制御性T細胞の機能ということを考えなければならない。これはアスベストのコアとなっているシリカの場合にその肺病変は珪肺症であるが合併症として重要なのが強皮症や関節リウマチなどの自己免疫疾患でありその場合に制御性T細胞は数あるいは質の減衰が起こっていることが想定され,我々が観察した内容としても珪肺症例での制御性T細胞分画である末梢血のCD4+25+分画はその機能が減弱しており,されに加えて,どうもシリカ曝露によって反応性T細胞も制御性T細胞も活性化を受け,反応性T細胞はCD4+25+となり制御性T細胞分画に混入するに加えて制御性T細胞は活性化に伴いアポトーシス受容体FASの発現過剰が誘導されて結果として制御性T細胞分画には本来の制御性T細胞の早期アポトーシスによる減弱と活性化反応性T細胞の混入が同時に起こってその分画の機能の減弱が自己免疫疾患の合併に繋がることが想定されていきているが,反対にアスベストの場合には,腫瘍免疫め減衰を制御性T細胞機能から考えるとその機能の亢進が想定される。この観点で,制御性T細胞機能を有するCD4+25+かつHTLV-1不死化ヒトT細胞株MT-2にてアスベスト長期低濃度曝露を実施するとやはりその制御性T細胞機能の亢進が惹起されていることが分かってきた。
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