研究課題/領域番号 |
20390180
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
村田 勝敬 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80157776)
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研究分担者 |
岩田 豊人 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00321894)
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キーワード | トリクロロエチレン / 曝露量-影響関係 / 神経運動機能影響 / 身体重心動揺検査 / 手のふるえ検査 |
研究概要 |
トリクロロエチレン作業者57名とそれら作業者の性・年齢がマッチした非曝露者60名を対象として尿中トリクロロエタノールおよびトリクロロ酢酸濃度を測定し、また神経運動機能としてコンピュータを用いた身体重心動揺(平衡機能)と手のふるえを計測した。トリクロロエチレン作業者の尿中トリクロロエタノールおよびトリクロロ酢酸濃度の中央値は各々1.7mg/Lおよび2.5mg/Lであり(対照群では検出限界値以下)、これらのデータから算出される気中トリクロロエチレン濃度は22ppm以下と推定された。曝露群の開眼時の身体重心動揺および利き手のふるえは、交絡因子を考慮した後の非曝露群と比べ、有意に大きかった。曝露群における2つの動揺指標と尿中トリクロロエタノール濃度との間には有意な量-影響関係が見られた。非利き手のふるえ強度は、曝露歴と曝露濃度より算出した累積曝露指標で分けた3群間で有意に異なった。以上より、トリクロロエチレン曝露は、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が勧告している短期曝露限界値(TLV-STEL、25ppm)以下のレベルであっても、曝露作業者の神経運動機能に影響し得ることが示された。また、身体動揺の不安定さは最近のトリクロロエチレン曝露によって生じるようであり、ふるえの増大は短期および長期曝露によって起こるかもしれないと推測された。今後、自覚症状とともに、上述のような客観的測定法による職業性曝露限界値の設定がなされるべきであろう。 有機溶剤などの一部では自覚症状などの主観的影響で曝露限界値が決められたものがあるが、有害影響の出始める濃度をより客観的な方法で測定し決定することが、労災保険に絡む"詐病"と峻別する上で、重要と考えられた。
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