研究課題
本研究は、G型肝炎ウイルス(GB virus C: GBV-C/HGV)の二重感染が成人T細胞白血病ウイルス(Human T Lymphotropic Virus type 1 : HTLV-1)の母子感染に与える影響を、後向きコホート研究によって評価する研究である。これまでに行われた研究から演繹される仮説として、我々は「GBV-C/HGVの二重感染がHTLV-1母子感染を抑制する可能性がある」との仮説を得た。一方、本研究はHTLV-1感染症を疫学的視点から深く理解し、その自然史を明らかにすることも同時に目指している。そこで、昨年までにG型肝炎ウイルスに対するプライマーを設計し、RT-PCRでの検出系を確立した。当該年度は、昨年度から今年度にかけて行ったRT-PCRによって算出された感染率が、約0.8パーセントと低く、必要サンプル数が1万検体を越えることから、当初の計画を変更し、HTLV-1の自然史と一般集団における抗体陽性率の推移から推定されるHTLV-1感染動態の研究を行うことにした。その結果、日本に存在するHTLV-1には、二つのサブグループ(日本型と大陸横断型)があり、南北に行くにしたがい、日本型が優勢になること、二つのサブグループの分岐は、おそらく日本以外の場所で起こったこと、分岐年代の推定より、HTLV-1が日本に持ち込まれた年代が約2万年から4万年前であることなどが示唆される結果を得た。また、長崎県の一般集団におけるHTLV-1の20年間にわたる抗体陽性率の経年的変化を解析することにより、抗体陽性率の低下がHTLV-1の感染カイネティクスに影響されている可能性を見出した。これに関しては、現在なお、解析中であるが、近いうちに結果が得られるものと思われる。
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