研究概要 |
本研究の目的は、高齢期に虚弱化をもたらす原因である筋肉量減少症に関して、コホート研究から、血清ビタミンD濃度およびビタミンD受容体遺伝子(VDR)との関連性を明らかにする。さらにそれらベースラインでの関連性をもとに追跡期間中に発生する生活機能低下、転倒・骨折発生及び要介護状態への移行状況について調査し、高齢期の健康増進と介護予防の予防対策を確立することである。 本年度は、板橋区在住の70歳以上の高齢女性1,375名(平均年齢75.3歳)である。未梢血よりDNAを抽出し、VDR遺伝子上に存在する3種の遺伝子多型:rs107358100(Fok I)、rs1544410(Bsm I)、rs731236(Taq I)に関して、TaqMan PCR法によりSNPのタイピング行った。他の測定項目から、身長、体重、握力、膝伸展筋力および下腿三頭筋周囲径を計測した。 結果、各遺伝子多型の頻度は、Fok Iが、C/C型36.6%(n=503)、C/T型42.2%(n=580)、T/T型12.5%(n=172)、Bsm Iが、G/G型79.6%(n=1094)、G/A型18.6%(n=256)、A/A型0.9%(n=12)、そしてTaq Iが、T/T型70.5%(n=969)、T/C型18.0%(n=247)、C/C型0.9%(n=13)、であった。そして、Fok I遺伝子多型において、右手握力(Kg)の平均値±標準誤差(年齢・BMI調整済)は、C/C型17.9±0.2、C/T型18.6±0.2、T/T型19.00±0.3(p<0.01)、同じく膝伸展筋力(Nm)は、C/C型56.5±0.7、C/T型58.0±0.6、T/T型60.3±1.2(p<0.02)といずれも3群間内で有意差が認められ、C/C型<C/T型<T/T型の順に握力および膝伸展筋が高かった。一方Bsm I、Taq I遺伝子多型とこれら筋力には関連がなかった。
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