研究概要 |
本研究の目的は、高齢期に虚弱化をもたらす原因である筋肉量減少症に関して、コホート研究から、血清ビタミンD濃度およびビタミンD受容体遺伝子(VDR)との関連性を明らかにする。さらにそれらベースラインでの関連性をもとに追跡期間中に発生する生活機能低下、転倒・骨折発生及び要介護状態への移行状況について調査し、高齢期の健康増進と介護予防の予防対策を確立することである。 本年度は、板橋区在住の70歳以上の高齢女性1,375名(平均年齢75.3歳)を対象とし、末梢血よりDNAを抽出し、VDR遺伝子上に存在する3種の遺伝子多型:rs107358100(Fok I),rs1544410(Bsm I),rs731236(Taq I)に関して、TaqMan PCR法によりSNPのタイピングを行なった。これらの遺伝子多型に対し、サルコペニアや高齢者の生活機能に関与すると考えられる以下の血液検査項目との関連性について分析を行なった。すなわち血清アルブミン値,B_2マイクログロブリン,25-OH-D,i-PTH,高感度CRP,シスタチンC,総ホモシスティンである。さらに筋量や筋力と関連すると考えられる骨密度についてDXA法及びQUS法のデータとの関連性についても分析を行なった。 結果、各々の遺伝子多型(Fok I;3型,Bsm I;3型,Taq I;3型)と各種血液項目や骨密度との関連について年齢を調整したうえでの分散分析の結果、有意な関連性を示したのはFok Iと総ホモシスティン量のみであった(P=0.035)。Bsm I,Taq Iではいずれの項目とも有意な関連性は認められなかった。昨年実施した各遺伝子多型と身体機能との関連性においてもFok Iのみが筋力(握力と膝伸展筋力)とに有意な関連性が認められており、サルコペニアについてはFok I遺伝子多型が各種マーカーと関連性の強い可能性が示された。
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