研究概要 |
【目的】心理・社会的因子が神経-免疫-内分泌軸を介して身体・心理的健康アウトカムに影響を及ぼすとの説がある。同仮説を検証すべく、免疫・炎症性マーカーである血清IL-6,TNF-□,高感度CRP,およびCMV(サイトメガロウイルス)抗体,HSV抗体(単純ヘルペスウイルス)と心理・社会的因子との関連を横断的に分析した。 【方法】2008年7月、群馬県草津町で実施された高齢者総合健康診査を受診した65歳以上高齢者571人を対象として、心理,社会的変数を含む生活問診,血液検査を含む医学,認知,体力検査を行った。血液は採血後すぐ遠心分離し、冷凍保存(-80℃)された血清を用いて、IL-6,TNF-□,高感度CRP,およびCMV-IgG抗体,HSV-IgG抗体の濃度を測定した。 【結果・考察】血清IL-6(<1.9vs.≧1.9),TNF-□(1.2≧vs1.2<),高感度CRP(0.56≧vs0.56<),CMV-IgG抗体(<27.7vs.≧27.7),HSV-IgG抗体(<58.6vs.≧58.6)を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析により,性,年齢,就学年数,喫煙歴,BMI,慢性疾患,総合的移動能力を強制投入すると共に,各目的変数と有意な単相関を認めた心理,社会変数をすべて投入し,ステップワイズ法により独立した関連要因を抽出した。社会活動性指標の個人活動得点が低いこととIL-6高値との間には独立した関連がみられた(1点低下することのOR=0.86,95%CI:0.78-0.96)。同様に,健康度自己評価が低いことはTNF-□高値と(OR=2.12,95%CI:1.12-4.02),外出頻度が低いことは高感度CRP高値と(1カテゴリー低下するごとのOR=1.37,95%CI:1.05-1.78),就学年数が短い(9年以下)ことはCMV-IgG抗体高値と(OR=1.62,95%CI:1.06-2.47),別居子・親戚との交流がないことはHSV-IgG抗体高値と(OR=1.81,95%CI:1.13-2.90),それぞれ独立した関連性があった。今後、これらの関連を縦断的に観察する必要がある。
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