研究課題
【目的】健康度自己評価(SRH)は高齢者の生命予後や障害発生の予知因子として知られるが、そのメカニズムは明らかでない。在宅自立高齢者においてSRHが身体・心理的交絡要因および炎症性マーカーを調整後も8年後のADL障害の発生を予測するかどうかを調べる。【方法】対象は長期縦断研究(TMIG-LISA)の初回調査(1991~92年)を受診し、ADL(移乗、着衣、食事、排泄、入浴)障害がない高齢者(≧65歳)1.048人(男439.女609)である。初回調査では問診、血液採取、体力測定等からなる健診を実施した。その後、対象を1999年1月(小金井)あるいは2000年8月(南外)まで7.7年(中央値)追跡し、ADL障害の新規発症の有無を確認した。SRHは、「あなたは普段ご自分で健康だと思いますか」という質問に対しA「非常に健康」、B「まあ健康」、C「あまり健康でない」、D「健康でない」の4択で回答を求めた。【結果】追跡期間中471人(男196、女275)がADL障害を発症し、累積発症率はD、C、B、A群の順に高かった。生存分析(Log-rank法)では、男のA、B群間を除く、全ての群間で有意差が見られた。A群に比べたB、C、D群の未調整ハザード比(HR)は1.50(95%CI;1.12-2.01)、2.19(1.60-3.00)、4.37(2.82-6.78)であった。性、年齢、調査地域、既知の交絡要因(慢性疾患の既往、血圧、HbA1c、HDL-Cho1、ALB、飲酒・喫煙歴、歩行速度、GDS短縮版、生活満足度LSIK)および炎症性マーカー(IL-6、CRP、TNF-α、WBC)調整後のHRは、B群1.42(1.03-1.96)、C群1.68(1.17-2.42)、D群2.54(1.52-4.24)であった。【結論】在宅自立高齢者においてSRHは身体・心理的交絡要因および炎症性マーカーを調整後もADL障害の発症を予測した。
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日本公衆衛生雑誌 57(印刷中)
Geriatrics and Gerontology International 10(印刷中)
老年精神医学雑誌 21
ページ: 198-202
第5章 高齢者のプロダクティビティと世代間交流. 世代間交流効果~人間発達と共生社会づくりの視点から(草野篤子, 金田利子, 間野百子, 柿沼幸雄編著)(三学出版)
ページ: 59-71