本研究は、悪い知らせを伝える際の医師の共感能力を認知的側面・生理的側面・行動的側面から多面的に評価することによってその機序を明らかにし、共感能力の向上に最適な介入法を開発することを目的とする。2008年度は、患者の情動が変化したときの医師の共感行動と皮膚電気抵抗、および視線量との関連の検討に着手した。対象はがん医療に携わる医師20名であり、模擬患者に対して難治がんの病名告知を行う医療面接を実験課題とする。模擬患者は面接時にあらかじめ決められた怒りや悲しみなどの情動を表出する。調査項目は、1)課題中の皮膚電気抵抗(SCR)、2)課題中の共感行動(RIAS日本語版)、3)医師の特性的共感(IRI日本語版・JSPE日本語版)、4)医師の社会的背景である。解析に先立ち、画談を撮影したビデオを用いて、第三者2人が独立してRIAS日本語版に基づき医師の面談時の行動を評定する。その後、患者の情動表出時の医師のSCRと共感行動の数に関して相関分析を行う。次に、医師の特性的共感(IRI日本語版・JSPE日本語版)と医師のSCRの関連について、相関分析、および共分散分析を行う。進捗状況は以下のとおりである。実験計画書を作成し、国立がんセンター倫理審査委員会の承認を得た。10名に対して予備実験を行った後、本実験を開始した。現在13名のデータを集積した。また、予備実験のデータに基づき、行動評定のためのマニュアル作成、および評定者のトレーニングを行っている。目標数のデータ集積が終了した後、解析した結果をまとめ論文として報告する。
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