研究課題/領域番号 |
20390192
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研究機関 | 愛知県がんセンター研究 |
研究代表者 |
田中 英夫 愛知県がんセンター(研究所), 疫学・予防部, 部長 (60470168)
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研究分担者 |
松尾 恵太郎 愛知県がんセンター, 疫学・予防部, 室長 (80393122)
鈴木 勇史 愛知県がんセンター, 疫学・予防部, 主任研究員 (70416163)
川瀬 孝和 愛知県がんセンター, 疫学・予防部, 主任研究員 (30463194)
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キーワード | 膵癌 / アルコール / MTHFR / 分子疫学 / 予防医学 / 葉酸 |
研究概要 |
本研究の目的は、難治がんと言われる膵・胆・肝臓癌の予防に資する生活習慣介入のための疫学的情報を得ることにある。今年度は、野菜や大豆などに含まれる葉酸の代謝酵素であるmethylenetetrahydrofolate reductase(MTHFR)の活性能を規定する1塩基多型(SNP)と、飲酒量の膵癌発症に及ぼす交互作用を、症例対照研究により検討した。 愛知県がんセンター初診患者を対象として、膵癌患者157人と、これと1:5でマッチさせた非がん患者785人をコントロール群に選んだ。MTHFRは、活性能の高いCC型、中位のCT型、低いTT型に分類した。多重ロジスティック回帰分析により喫煙歴や経口葉酸摂取量などを調整してリスク比を算出したところ、MTHFR活性が生まれつき高いCC型のSNPを持つ人(人口の約37%)では、飲酒量が増えるに従って膵癌を発症する確率が有意に増加した(P<0.01)。これに対し、CT型(人口の約47%)およびTT型(人口の約16%)の人では、そのような関係は認められなかった。これまで多量飲酒が膵癌の発祥要因であるかは明らかではなかったが、DNA合成を規定するMTHFRという酵素の活性能の遺伝的な違いによって、多量飲酒が日本人では膵癌の危険因子になり得ることが初めて明らかになった。この知見は日本人の膵癌予防のための生活習慣介入の方法を考える上で有用となると思われる。
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