研究概要 |
研究の目的:日本では毎年約7万1千人が膵臓、胆道および肝癌で死亡している。中でも膵がんは診断された時点でそのほとんどが進行がんの状態であるため、効果的な一次予防に資する知見の集積が望まれている。本年度は膵がんの発症に関連する新たな遺伝的要因を見出し、将来の膵がんのオーダーメード予防に資する情報を得ることにした。 研究の成果:愛知県がんセンター中央病院を2001~05年に受診し、研究参加の同意の得られた膵がん患者185名、非がんの初診患者1465名による症例対照研究を企画、実行した。rs8176719をABO血液型のO allele、rs8176746とrs8176747をB alleleのマーカーと位置付け、ABO血液型のジェノタイプと膵がん発症との関連を検討した。対照群におけるO,A,Bのallele頻度は各々55%、28%、17%で、日本人一般のそれと同じであった。性、年齢、喫煙量、飲酒習慣、BMI、20歳のときのBMI、糖尿病の既往、膵がんの家族歴を調整して多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、O型に比べてA型、AB型、B型は、各々1.64倍(95%信頼区間1.08-2.48)、1.67倍(0.94-2.98)、1.42倍(0.88-2.31)膵がんリスクが高かった。また、O alleleを2個持つ人に比べて1個、0個持つ人では各々1.50倍(1.00-2.25)1.77倍(1.11-2.83)となり、有意なトレンドが認められた(P=0.012)。OO alleleに比べてAO alleleは1.67倍(1.08-2.57)、BB alleleは3.28倍(1.38-7.80)いずれも有意に膵がんリスクが高かった。また、血液型がA型、B型もしくはAB型の人が、膵がんの既知リスク因子である喫煙、20歳のときの肥満、糖尿病の既往、飲酒習慣を有していると、O型でこれらリスク因子を有していない人に比べて有意に膵がん発症リスクが高まった。 これらの知見は遺伝的な膵発がん感受性を考慮した予防介入手段の開発につながるものである。
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