2者間におけるいとこなど第3度血縁鑑定においては、アリルの共有のないことが75%起こるため、アリル数が多くヘテロ接合度の高いミニサテライトローカスにおけるアリルの共有があれば、最も効果的に尤度比を上げて肯否の判断が可能となる。前年度までは、第3度血縁を扱う前段階として、同胞の血縁関係の検査における縦列反復配列の有用性について検討をおこない、ともに複数の同胞を有する2つのグループが二者における第3度血縁関係を判定するため、高多型ミニサテライトを用いて検討を行う方法を、実際例にて試験的に判定してみた。しかし、2つのローカスにおいては、双方のグループ間ではアリルの共有はなく判定不能であった。また、現在鑑識捜査などで、世界中で用いられているマイクロサテライトの15ローカス検出キットの有用性について、2万例の同胞ペアをシミュレーションで作成して検討したが、参照する同胞の数を増やしたところ、尤度比は向上しほぼ間違いなく決定できた。しかし、従兄弟である第3度血縁関係の場合は、シミュレーションでは、このシステムでは殆ど判定できないことが予想された。実際に第3度血縁関係にあるボランティアより血液を提供してもらい、マイクロサテライトの型判定を行って、第3度血縁関係の有無について尤度比を算出したが、その値は1を下まわる結果となった。このため、ミニサテライト数ローカスの一致に頼るのではなく、ゲノム内の多数領域のマイクロサテライトをマッピングすることにより、2者間で染色体のどの程度を共有しているかを推定することにより、その共有程度の多少によって、血縁関係の判断が可能かどうかを検討した。ヒト常染色体22本にほぼ均等に分布する382ローカスのCAリピートの多型をマッピングしたデータを用いて、実際のいとこや他人、親子などでどのくらいのハプロタイプの共有があるかを検討した。現在データを解析中である。
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