研究課題
本研究は、難治性神経代謝疾患の遺伝的基盤を解明し、その遺伝子改変マウスを作製して、一生涯という時間軸に立った治療・予防法を開発する。さらに、病態関連遺伝子を同定することにより、病態解析や創薬のターゲットとなる機能分子を解明し、ヒトの神経代謝に関わる基盤的調節機能を明らかにすることを目的とした。今年度は癌性悪液質を念頭に、グレリン及びグレリン放出促進薬としての漢方薬、六君子湯の検討を行った。グレリンアゴニストのGHRP2は、Yoshida肝癌細胞と腹腔内に播腫した癌性悪液質モデルにおいて、食欲を有意に促進し、抗癌剤5FUによる治療効果を増強し、寿命の延長傾向が認められた。また、慢性腎不全モデルにおいて、グレリン及びグレリンアゴニスト投与により、摂食のみならず筋肉量(Lean Body Mass)を増加させることを明らかにした。さらに、六君子湯は担癌動物で亢進しているセロトニン系、特にその2c受容体を阻害し、グレリン分泌を促進することで、癌性悪液質モデルの食欲、体重、筋肉量を増加することを証明した。六君子湯のこの作用は、8つの構成生薬のうちチンピ及びソウジュツが重要な役割を担っていることを明らかにした。三次元HPLC解析を用いた生薬構成成分解析により、チンピにはフラボノイド(ヘスペリジン)が、この作用の少なくとも一部を担うことを明らかにした。神経性食欲不振症では、その患者血中にグレリンの自己抗体が存在することを明らかにし、現在解析をすすめている。我々はすでに神経性食欲不振症患者血中に強力な食欲抑制系メラノコルチン自己抗体が存在し、その自己抗体が神経性食欲不振症の病態の一翼を担う可能性を報告してきた。
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