研究課題
【目的】施灸による脳の初期効果に物質レベルで客観的指標を樹立し、脳内情報処理機構を解明する。経験的に施灸が有効であると知られる慢性疾患における、施灸に対する脳の反応特性を明らかにする。【実験方法】本年度は,糖尿病モデルと正常動物を主な対象として研究を行った。計画した質量分析およびDNAマイクロアレイについては、その準備を行った。本年度に実行できた主な解析方法は、以下の3つである。1)中枢反応の解明:マイクロダイアリシスおよび条件性場所選好試験(CPP)を行う。マイクロダイアリシスでは、特に腹側線条体におけるドーパミン分泌について検討した。CPPでは、施灸および丈の煙による報酬特性について検討した。2)末梢反応の解析:体温・心電図テレメーターを用いて、自律神経系の関与の仕方を測定する。心電図テレメトリーでは、周波数解析を行い、交感神経系および副交感神経系に対する施灸の効果を調べた。3)行動試験:脳の反応の総括的表現としての行動を測定する。Open field試験を中心に、施灸および艾の煙が動物の活動量に及ぼす効果を検索した。【結果】得られた主な成果は、以下の2点であり、論文として投稿準備中である。(1)マイクロダイアリシス実験:灸により、大脳基底膜(背側および腹側線条体)において神経伝達物質(ドーパミン)の分泌が引き起こされる。(2)体温に関するテレメーター実験:灸により、体温の上昇が引き起こされる。【意義と重要性】ドーパミンの分泌から、施灸により脳の基本機能を制御できる可能性が示唆された。特に、ヒトにおける様々なドーパミン調節障害を伴う疾患の治療に応用できると期待される。
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