研究課題
膵癌転移機構に関与している重要な機序として上皮一間葉形質転換 : epithelial to mesenchymal transition(EMT)が考えられている。EMTは上皮細胞が間葉系の性質を持ち移動能力を獲得する現象であり、癌の浸潤、転移機構のfirst stepと推測される。本研究の最終目的はEMTが誘導されている膵癌細胞に対してapoptosisを特異的に誘導する治療法を開発することである。本年度は膵癌細胞のEMTに関与するmiRNAや分子の同定のために以下の研究を行った。1)膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)のパラフィン包埋組織より厚さ10μmの切片をマイクロトームで薄切し、microdissectionによって、非浸潤癌病変のみを削りだした。その病変からmiRNAを抽出し、膵癌細胞株から抽出したmiRNAとともにmiRNAarrayを行い、その発現の差違を比較検討した。IPMNと比べ膵癌で発現の高かったmiR205、miR18a群などのmiRNAをEMT誘導に関与するmiRNA候補として選別した。2)膵癌細胞株Panc-1にBMP4を投与し、EMT誘導前後のRNAを用いてmicroarrayを行い、EMT関連分子として新たにS100Pを同定した。siRNAによってS100Pを発現抑制した膵癌細胞株Panc-1ではBMP4による細胞移動能の亢進作用が消失していた。3)1)にて、選別したmiRNAについて、手術摘出膵癌組織における発現をreal-timeRT-PCRにて検討した。その結果、miR18a群が膵癌組織において高発現していることを確認した。
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