研究課題
膵癌転移機構に関与している重要な機序として上皮-間葉形質転換:epithelial to mesenchymal transition(EMT)が考えられている。EMTは上皮細胞が間葉系の性質を持ち移動能力を獲得する現象であり、癌の浸潤、転移機構のfirst stepと推測される。本研究の最終目的はEMTが誘導されている膵癌細胞に対してapoptosisを特異的に誘導する治療法を開発することである。本年度はIPMNのmiRNA発現プロファイルと浸潤性膵癌組織のmiRNA発現プロファイルを比較し、悪性化に関与するmiRNAの同定を目的として以下の研究を行った。1)膵癌手術検体の凍結保存標本より厚さ8μmの切片をcryostatで薄切し、microdissectionによって癌の腺管構造のみを削りだした。そのサンプルからmiRNAを抽出し、miRNA arrayを行って癌における発現プロファイルを以前にIPMN組織より得られた発現プロファイルと比較した。その結果、IPMNと比べ膵癌で発現が有意に低下しているmiR145、miR363群などのmiRNAをEMT誘導に関与するmiRNA候補として選別した。2)以前より、膵癌細胞にEMTを誘導することが判明している転写因子、MSX2を膵癌細胞株BXPC3に強制発現させ、それにより生じるmiRNA発現プロファイルの変化をmiRNA arrayにて検討した。その結果、本実験系においてもmiR363発現はEMT誘導に伴って低下することが確認された。3)1)にて、癌組織特異的に発現低下がみられるmiR145前駆体を膵癌細胞株BXPC3にトランスフェクトしたところ、細胞増殖抑制効果が確認された。
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