研究概要 |
間質増生を特徴とするスキルス胃癌は,胃癌の中でも最も予後不良な疾患であり,有効な治療法は確立されていない.スキルス胃癌の間質を構成する線維芽細胞は,癌随伴線維芽細胞と呼ばれ,癌の増殖を促進する作用を持つ事が最近明らかにされている.即ち,スキルス胃癌においては,この癌随伴線維芽細胞が悪性形質の獲得に重要な働きを担っていると考えられ,これを標的とすれば,より効果的な治療戦略をとることが可能になると考えられる.癌随伴細胞は肝星細胞と同様にαSMA陽性の筋線維芽細胞に類似する事からVitamin Aを取り込む特徴があると想定し,本研究では,Vitamin A結合型リポゾームを単体として癌随伴線維芽細胞へ特異的な送達法を開発した.つまり,癌随伴細胞へ抗がん剤などを送達し,癌細胞のみならず周囲の支持細胞も同時に治療する事で効果を高める事を目論んだ.その結果,Vitamin A結合リポゾームを用いると癌随伴細胞への特異的な薬剤の送達が確認され,さらに,胃癌患者から採取した癌随伴細胞と樹立胃癌細胞株の共培養実験系で基礎的検討を行ったところ,胃癌細胞の増殖は低下することを確認した.そこで,in vivoで担癌マウスを作製し,VA結合リポゾームに抗がん剤を内包化し投与実験を行ったところ,VA-リポゾーム内包化抗がん剤投与マウスでは抗がん剤単独,リポゾーム内包化抗がん剤よりも有意に腫瘍増殖が抑制された つまり,癌随伴線維が細胞を標的とした抗がん治療法は,スキルス胃癌に対する新たな治療戦略となりうると考えられた
|