研究概要 |
本研究の目的はAktによる「糖脂質代謝調節を介した」心機能制御のメカニズムを解明し,心不全の新たな治療戦略を開発することである.平成22年度はAktシグナルによる心筋代謝調節機構の機序を明らかにすることを主な目的として研究を行った. 1) Aktの活性低下が心機能に及ぼす影響 成人期において心臓特異的にAktの活性が低下するような遺伝子改変マウスを作成した。このマウスでは次第に左室収縮能が低下し心重量も減少もした。このときアミノ酸を投与すると左室収縮能が改善され心重量の減少も抑制された。 また、Akt活性低下に伴い心臓組織におけるATP濃度は減少し、アミノ酸投与によりATP濃度減少は抑制された。 2、Aktによってリン酸化される基質の同宗 上記のようなAktの心保護作用がどのような下流のシグナルによって調節されているかを明らかにするために、Aktによってリン酸化される基質の同定を試みた。Aktによってリン酸化されるアミノ酸配列を特異的に認識する抗体を用いて免疫沈降後にSDS・PAGEを行い、免疫沈降される蛋白の同定をMS/MSにより試みたが、現時点では新たなAkt基質の同定には至っていない。 以上の結果はAktの活性低下がATP産生低下を引き起こし、アミノ酸投与によりそれが解除されることを示すものと考えられた。今後はこの代謝調節経路におけるAktのリン酸化標的因子を同定することが重要になるものと思われる.
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