研究課題
ヒトゲノムの解読が終了した現在、遺伝子機能ないし細胞形質の制御機構に研究の焦点が移り、エピジェネティクス研究、特にヌクレオソームやクロマチンといった真核生物に特有なDNAの高次構造の調節に関わる諸反応(転写、複製、修復等)の制御の解明が注目されている。エピジェネティクスは種々の細胞刺激・ストレスにより後天的にもたらされる制御のため、心血管疾患を代表とする生活習慣病を始めとする病態の発症機序の鍵となると考えられている。このように生命現象において極めて重要な役割を果たすエピジェネティクスの時空間的な制御を理解するためには、DNA高次構造の制御を中心とした蛋白質の包括的な解析が必要である。本計画では、心血管領域の病態発症におけるエピジェネティクス制御、すなわちクロマチン転写制御、さらにDNA修復の制御機構を明らかにし、創薬の糸口にしたい。平成22年度は前年度に引き続き、エピジェネティクス解析による心血管領域におけるクロマチン転写の解析を行った。まず始めにそのモデルケースとして心血管リモデリングを制御する転写因子Kruppel-like factor 5 (KLF5)および、クロマチン制御因子の作用機序ならびに機能的な意義をクロマチン、細胞、動物(マウス)レベルで解析した。その結果、DNA損傷修復の代表的因子ataxia telangiectasia mutated (ATM)が内皮細胞機能障害を制御しており、なかでも細胞老化を促進することが明らかになった。これは従来の研究では解析困難であったエピジェネティクス制御機構に着目したものである。加えて、心血管病態におけるDNA損傷修復に関与するメカニムズムを初めて示した研究であり、新規性が高い。本研究内容はJ Biol Chem誌に発表した(研究成果参照)。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
J Biol Chem
巻: 285 ページ: 29662-29670
J Mol Biol
巻: 401 ページ: 197-114
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