研究課題
アドレノメデュリン(AM)は、全身の組織で広範に産生され、多彩な生理活性を有するペプチドである。AMは当初、強力な血管拡張作用を有する降圧物質として注目されたが、その後の研究から、血管拡張作用にとどまらず、抗酸化作用、抗炎症作用、抗血栓作用、抗動脈硬化作用など、生体内の恒常性維持において、重要な様々な生理活性を持つことが明らかとなってきた。我々は、AMホモノックアウトマウス(AM-/-)を樹立し、AM-/-が血管の発生異常により胎生致死であることから、AMが血管新生作用を有することを報告した。AMと、その一連のファミリー因子の受容体であるCRLRには、これに重合する複数の受容体活性調節タンパク(RAMP)が存在する。我々は、一昨年度までの研究で、血管の発生におけるAMの生理作用が、主としてRAMP2により制御されることを報告してきた。本年度の研究では、AM-RAMP2系の代謝制御における意義を検討するため、成体が得られるRAMP2ヘテロノックアウトマウス(RAMP2+/-)マウスに対し、高脂肪食負荷実験を行った。RAMP2+/-では、高脂肪食負荷時、野生型に比較して、体重増加、内臓脂肪重量の増加、血中インスリン値の上昇、糖負荷試験における耐糖能の悪化が認められた。RAMP2+/-では、内臓脂肪における炎症性サイトカイン、ケモカインの発現亢進と、アディポネクチンの発現低下を認め、脂肪組織における慢性炎症が、肥満や耐糖能異常の一因になっていることが推測された。以上から、RAMP2ノックアウトマウスで、AMノックアウトマウスに認められる重要な代謝系、血管系の表現型が再現されることが確認された。逆に、RAMP2を標的とすることで、AMの生理作用を制御できる可能があり、RAMP2は、AMに代わる治療標的となる可能性がある。
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J Clin Invest.
巻: 120 ページ: 254-265
Peptides
巻: 31 ページ: 865-871
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