研究概要 |
我々は以前に心筋細胞表面においてN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)に結合する新規の糖鎖結合分子が存在することを見いだした(Aso et al. J Control Release, 2007)。このGlucNAc結合型レクチンを利用することにより、骨髄単核球を全身投与で効率よく虚血心筋に集積させ、再生治療に応用可能になると考え、研究を進めてきた。 当該年では、まず心筋細胞のGlcNAc結合型レクチンの同定を試み、筋原線維蛋白質の機能があることを明らかにした。今後はアミノ酸シークエンスや質量分析(TOF-MAS)によりさらに解析を進めていく。 一方、GlcNAcで修飾したリポソームが心筋細胞のGlcNAc結合型レクチンに接着し、細胞内に取り込まれることを電子顕微鏡下で観察した。そこで、GlucNAc結合型レクチンを利用して、骨髄単核球を虚血心筋へ集中的に集積させるためのin vitroの基礎検討を行った。ラットより骨髄単核球を採取しGlcNAc-lipophilic polymerを用いて単核球表面にGlcNAcを修飾した。この方法により細胞傷害性無く、単核球を修飾できることをtrypan blue染色にて確認した。次に、GlcNAc修飾骨髄単核球をラット培養心筋細胞とin vitroで反応させたところ、有意に心筋細胞への接着が亢進した。さらに、心筋細胞に接着した骨髄単核球は高率に心筋細胞へと分化した(Kobayashi et al. Biomaterials, 2009)。 以上の結果より、骨髄単核球をGlcNAcで修飾することにより全身投与で虚血心筋への輸送が可能であることが明らかになった。
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