研究概要 |
(研究背景) 拡張型心筋症(DCM)と肥大型心筋症(HCM)は収縮または拡張障害により心不全をきたすことが知られている。これまでの基礎研究から、ヒト心筋構造蛋白の遺伝子変異がこれらの病態の発症因子であることが報告されてきた。本研究では、我々が単離した筋特異的コイル・コイル構造を持つMURC蛋白が心筋Z-lineに分布し、ヒト心筋症の原因遺伝子であることが示唆された。 (方法) 1.米国テキサス大学医学部と共同研究にて、1199人の末梢血標本用いてヒトゲノム解析を行った。内訳はDCM383人、HCM307人、正常人509人であった。網羅的MURCのゲノム解析により、我々はp.N128K,p.R140W,p.L153P,p.S307T,p.P324L、p.S364Lの合計6か所におけるMURC遺伝子変異をDCM患者さんから同定した。さらに、変異群p.S307TとP.N128KはDCMの家系内に有意に認め(p=0.003)、変異群p.P324Lは散発性のDCM3症例に存在し、うち一症例においてトロポミオシン-1の変異がp.M245Tにおいて認められた。 2.また、p.L232-R238の欠損変異が孤発的なHCM3症例に認められ、これらの症例はいずれもミオシン重鎖7の変異(p.L970V)を伴っていた。心筋症にまつわるの他の臨床病態像として、MURCの変異をもつ4人の症例において、心不全が重篤化し心臓移植が実施された。 3.臨床病態像を裏付ける実験データとして、新生児心筋細胞にMURC変異遺伝子を導入すると、野生型の心筋細胞に比べ、細胞内におけるRhoAの活性が低下し、心筋細胞の成熟過程が有意に阻害されていた。 (結語) 我々が単離した筋特異的構造蛋白MURCはヒト心筋症の発症及び予後に深くかかわる重要な蛋白であり、この遺伝子における変異解析が心筋症の病態解明につながることが示唆された。
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