研究概要 |
心不全・致死的不整脈の重要な要因としてのRyR2機能異常の機序を解明し、新しい心不全・致死的不整脈の治療法を開発することを目的に、平成22年度には以下の知見を得た。 A.頻脈誘発性犬心不全モデルの細胞内Ca動態: 1)不全心筋SRではCa spark頻度は増加し、RyR2の特定領域(N-terminal,central:N-C)ドメイン連関障害が生じていた。 2)不全心筋では、RyR2の調節蛋白であるcalmodulin(CaM)のRyR2に対する結合親和性が低下していた。 4)CaMのRyR2に対する結合親和性を著しく高めたCaM-GSHを作成した。このCaM-GSHは不全心筋細胞のCa spark頻度を著明に抑制した。 B.CPVT型KIマウス(S2246L/+)の病理・形態、心機能評価ならびに催不整脈性: 1)KIマウスは、epinephrine負荷またはトレッドミル運動負荷により容易に多源性心室頻拍(VT)を生じた。 2)KIマウスの心筋細胞では、isoproterenol負荷にて、Ca spark頻度は増加し、筋小胞体内のCa contentは減少していた。 3)KIマウスでは、点突然変異S2246Lを含むdomain(2232-2266)が近傍のdomainと異常に強固なdomain連関を形成することにより、チャネルが不安定化しCa漏出を生じることが示された。 4)RyR1の点突然変異病として知られる悪性高熱症の特効薬であるダントロレンは、チャネルを安定化し(N-terminal,centralドメイン連関障害の是正)、Ca漏出を抑制することによりVTを抑制した。 以上、心不全とCPVTに共通するCaハンドリング異常のメカニズムとして、RyR2内ドメイン連関障害→CaM解離→Ca2+漏出が示唆され、このCa2+漏出を防ぐことにより新たな心不全・不整脈治療につながることが示唆された。
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