研究概要 |
本研究の目的は、肺サーファクタントタンパク質(SP-A,SP-C,SP-D)による呼吸器感染症・炎症に対する防御機構の分子機序を解明し、これらの特異蛋白質を利用した病態肺の診断治療への応用のための分子基盤を確立することである。以下に平成23年度の研究成果を要約する。 1.肺コレクチンのSP-AとSP-D存在下でA549細胞ヘレジオネラ菌を感染させると、LC3-IからLC3-IIへの変換が抑制され、抗LC3抗体による免疫染色でLC3の増加が認められなかった。このことはSP-AとSP-Dがレジオネラ菌による細胞のオートファジーを抑制することを示している。 2.Mycobacterium avium上のSP-Aリガンドは、M.aviumの脂質画分に存在し、H^1NMR解析によりアシル基を含むmethoxy groupであることが示唆された。SP-Dのリガンドはリポアラビノマンナンであった。また、走査型電子顕微鏡による観察で、SP-A多量体はM.avium菌体表面全体全てを覆うように結合していたが、SP-Dは散発的に菌体に結合していた。 3.新生児肺胞蛋白症、および、間質性肺炎患者のBALF中のSP-Cを今回作成した特異的抗SP-CIgY抗体で検出できた。今回の症例ではSP-C欠損を示唆する結果はなかった。 4.異所性SP-Dの機能について検討した。SP-Dは膀胱上皮に発現しており、膀胱上皮に発現しているUroplakin Iaに対するFimH(尿路病原性大腸菌UPEC上の受容体)の結合を阻止することによって、UPECの上皮への接着を阻止していることを示した。さらに、SP-Dは、UPECの凝集、を惹起することによって膀胱上皮へのUPEC接着と上皮傷害を防いでいることを示した。
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