研究概要 |
ムチン遺伝子などの気道粘膜抗ウイルス遺伝子群の多型解析・機能解析に加えて、インフルエンザウイルスのレセプターとなる糖鎖を合成するシアル酸転移酵素の遺伝子解析を行い、我々が保有する多数のヒト正常気道上皮細胞での発現を解析し、ヒトおよび鳥インフルエンザウイルス感染症に関連する宿主側の因子、特に易感染性・感染抵抗性や病態などに関わる因子、その機序を明らかにすることを目的にしている。ヒトインフルエンザウイルスレセプターのSAα2,6Gal、鳥インフルエンザウイルスレセプターのSAα2,3Galとなる糖鎖の末端にシアル酸を付加するシアル酸転移酵素遺伝子のうち今年度はST6GAL1,ST3GAL1のヒト気道上皮細胞で使われている転写開始点の特定を5'RACE法で行ったところ、転写開始点は複数あることがそれぞれ知られているが、気道上皮細胞の再分化に伴い異なる転写開始点が使われる場合、上気道と下気道で転写開始点が異なる場合などが認められた。ヒト気道上皮細胞に種々の刺激を加え、シアル酸転移酵素遺伝子mRNAの発現量をRT/real time PCRにて検討したところ、発現を誘導する刺激はそれぞれの遺伝子で異なっていた。ヒト気道上皮においてはヒトインフルエンザウイルスレセプターのSAα2,6Galの発現が優位であることは既に知られている通りであるが、鳥インフルエンザウイルスレセプターとなるSAα2,3Galの気道上皮における発現を誘導する刺激があることと、気道の部位により使われているプロモーターが違うであろうことは、鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染から重症化へ至る機序を考える上で重要であると思われた。
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