研究概要 |
近年、多彩な疾患群の発症・進展過程において、小胞体ストレスがその病因として注目されている。しかし腎臓病学の分野では、小胞体ストレスの病理学的意義・重要性に関し、未だほとんど検討がなされていない。本研究は、各種腎病変における小胞体ストレスの関与・役割をlight side, dark sideの両面から明らかにするとともに、そこに関与する小胞体ストレス応答の分子機構を解明し、さらにその知見を基盤に、小胞体ストレス応答を標的とした新たな腎疾患治療戦略を創出することを目的とする。本年度は小胞体ストレスと炎症性疾患との関わりに着目し、糸球体細胞の培養系(mesangial cell, podocyte)を用いて、小胞体ストレスがNF-kBの活性化やケモカインの発現にどのような影響を与えるのかを検討した。その結果、小胞体ストレスは糸球体細胞においてNF-kBの活性化を軽度に誘導すること、しかしあらかじめ惹起された小胞体ストレスは後続の炎症性刺激によるNF-kBの高度な活性化を顕著に抑制しうることを明らかにした。またそのメカニズムとして、NF-kBを抑制する分子として知られるA20が小胞体ストレスにより誘導されること、またサイトカイン(TNF)によるNF-kBの活性化に不可欠なTRAF2のレベルが小胞体ストレスにより低下すること、そしてこれらの機序を介して、炎症刺激に対する糸球体細胞の不応答性が誘導されることを明らかにし、2報の論文として報告した(Okamura et al. Am J Physiol 2008; Hayakawa et al. J Immunol 2009)。
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