研究概要 |
小胞体ストレスの炎症応答における役割、特にその抗炎症効果についての検討を行った。具体的には糸球体細胞の培養系(メサンギウム細胞,ポドサイト)および近位尿細管の培養系を用い、小胞体ストレスがNF-κBの活性化やケモカインの発現にどのような影響を与えるのかを検討した。その結果、あらかじめ惹起された小胞体ストレス応答は後続の炎症性刺激によるNF-κBの高度な活性化を顕著に抑制しうることを証明し、またそのメカニズムとして、C/EBPファミリーの誘導、A20の誘導、およびTRAF2の低下を介し、炎症刺激に対する糸球体細胞および尿細管細胞の不応答性が惹起されることを明らかにした。また、LPSにより誘導される各種炎症モデルに於いて、あらかじめ小胞体ストレス応答を惹起しておくことによりLPSによるin vivoでの炎症応答を抑制することが可能であることを証明し、さらに抗炎症/免疫抑制剤として知られるcyclosporin AやFK506の抗炎症効果の一部は小胞体ストレス応答の惹起を介したものであることを明らかにした。以上の研究成果は、J Immunolに4報の論文として発表した(J Immunol 182 : 1182-1191, 2009 ; J Immunol 182 : 7201-7211, 2009 ; J Immunol 183 : 1368-1374, 2009 ; J Immunol 183 : 1480-1487, 2009)。
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