研究概要 |
一昨年度から昨年度にかけ、小胞体ストレスの炎症応答における役割、特にその抗炎症効果について検討を行い、あらかじめ惹起された小胞体ストレス応答は後続の炎症性刺激(TNF-α等)によるNF-κBの高度な活性化を顕著に抑制しうることを証明し、またそのメカニズムとして、C/EBPβの誘導、A20の誘導、およびTRAF2の減少が関与する事を明らかにした。今年度はその詳細なメカニズムに関する更なる解析を行い、小胞体ストレスによるC/EBPβの誘導には特定の小胞体ストレス応答系(UPR)が関与すること、A20の誘導には小胞体ストレスによる早期一過的なNF-κBの活性化が寄与すること、またTRAF2の減少にER stress-associated degradation(ubiquitin-proteasome系)を介したタンパク分解系が寄与することを証明した。また、TNF-αによるNF-κBの活性化にはAktのリン酸化が介在し、そのリン酸化を小胞体ストレスが抑制すること、さらにその過程にATF6経路を介したmTORC1の活性化が関与していることを明らかにした。こうした小胞体ストレス応答の“Light Side”を明らかにする一方、小胞体ストレスがPERK、IRE1経路を介して、MAPキナーゼ系のリン酸化を誘導すること、つまり組織障害における“Dark Side”の一端も明らかにすることができた。これらの研究成果は、4報の原著論文として報告を行った。(J Am Soc Nephrol 21: 73-81, 2010. Biochem Biophys Res Commun 397: 176-180, 2010. Mol Cell Biol 31: 1710-1718, 2011. Toxicol Sci 120: 79-86, 2011).
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