研究概要 |
本計画は、胚性幹細胞(ES細胞)から腎臓の起源である中間中胚葉及び前駆細胞である後腎間葉を誘導することを目的とする。腎臓は中間中胚葉という組織から発生し、そこから前腎、中腎が形成され、さらに後腎間葉という前駆細胞集団が派生し、それが糸球体足細胞、近位及び遠位尿細管に分化していく。まずSall1遺伝子座にGFPを導入したマウスからGFPが高発現する細胞を選別し、Wnt4で刺激することによって、1個の細胞から糸球体、近位尿細管、遠位尿細管という多系統に分化する前駆細胞を検出できる系を開発した(Osafune et al., Development,2006)。次にこの検出系を基盤としてES細胞から腎臓前駆細胞の誘導を目指すに際して、前駆細胞だけを純化単離することが必須である。そこで新たに中間中胚葉及び未分化な後腎間葉がGFPで蛍光発色するES細胞及びマウスを作成した。このマウスの胎生8.5日の中間中胚葉と胎生17.5日の後腎間葉をFACSで単離し、Affimetrix社のGeneChipを用いてマイクロアレイ解析を行った。これによって中間中胚葉と後腎間葉に共通する、あるいはどちらかに特異的な遺伝子群の候補が挙がっている。現在これらの発現をin situ hybridizationで確認中である。これによって中間中胚葉と後腎間葉の質的違いを同定できると期待している。またES細胞からもGFP陽性細胞を誘導する条件を見いだし、遺伝子発現様式を検討中である。今後、生体の中間中胚葉及び後腎間葉と同一であるかを検定しながら、ES細胞からの誘導条件を改善しでいく計画である。
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