腎臓におけるNa再吸収と高血圧症の強い因果関係が示唆されている。腎臓でのNa再吸収においてとりわけ重要な働きをしているのが上皮型Naチャネル(ENaC)である。私たちはラット腎臓よりプロスタシンというセリンプロテアーゼを単離し、プロスタシンがENaC活性を増強することを証明し、プロスタシンが食塩感受性高血圧症の発症に重要な役割を果たしている可能性を提唱してきた。 1.本年度はまず活性型組換えプロスタシンタンパク質の作成に着手した。得られた組換えプロスタシンタンパク質をラットに持続静注してプロスタシンによるアルドステロン産生誘導について検討した。8週齢Wistar ratの右大腿静脈よりPE製チューブを挿入し浸透圧ポンプにより、Active Proを持続静注(200mg/week)した。1週間後にsacrificeし、副腎のCYPIIB2発現および血漿aldosterone濃度を測定した。副腎のCYPIIB2および血漿aldosterone濃度ともにおよそ3倍増加した。 2.また、ヒト副腎皮質腺腫細胞(H295R cell)においてprostasinによるCYP11B2誘導、aidosterone産生を検討した。hCYPIIB2(pB2-1521) constructをpGL3- Basic luciferase reporterに挿入し、H295R cellにトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後にActive Proを投与し、24時間後にluciferase活性を測定した。prostasinによりIuciferase活性は1.6倍亢進した。aldosterone産生は2-2.5倍の増加がみられた。 原発性aldosterone症においてプロスタシン産生が刺激されている事を既に報告したが、プロスタシン自体が副腎に作用しaldosterone産生を刺激するという新しい知見が得られた。
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