研究課題
視神経脊髄炎(NMO、デビック病)に特異な抗アクアポリン4[AQP4]抗体の発見に伴い、NMOは多発性硬化症(MS)と異なる病態であることが明らかになってきている。本研究では、NMOにおけるAQP4関連病態の解析と適切な治療法の確立を目的としてきた。1. 抗AQP4抗体の病態との関連。[A]エピトープ解析: 抗AQP4抗体陽性NMO患者の精製IgGをAQP4発現細胞と反応性させたところ症例によりエピトープは多様であることが示唆された。[B]病勢における抗体価の推移: 抗AQP4抗体価は症例毎に大きく異なるものの、各症例においてはしばしば再発時に抗体価の上昇がみられた。[C]海外の症例における抗AQP4抗体の解析: バンコクのマヒドール大学のMSクリニックにおける連続140例の中枢神経の炎症性脱髄疾患においてAQP4抗体を盲験下で検討したが、全体では約40%の症例で陽性だった。また臨床現場ではしばしばAQP4抗体陽性例がMSと診断されていた。2.NMOに特異なアストロサイト細胞障害性の証明。[A]NMO病変におけるアストロサイト関連タンパクの動態解析: NMO病変ではGFAPなどアストロサイト関連タンパクの染色性は広範に欠失していたが、MBPの染色性は比較的保持されていた。一方、オリゴデンドロサイトの傷害を示唆する所見がみられた。[B] 抗AQP4抗体の細胞障害性解析: アストロサイトやAQP4発現HEK293細胞に抗AQP4抗体及び補体を添加したところ、細胞傷害が惹起された。そこに免疫グロブリン(IVIG)を添加すると抗AQP4抗体の結合が抑制され治療的意義が示唆された。3.NMOのステロイド治療法の検討。当科症例の解析により再発後のプレドニゾロン投与量は1.5年は10mg/日以上を保持し、その後に漸減することにより早期の再発が抑制されることが示唆された。
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