研究概要 |
本研究は,脳活勘とそれを支える脳循環代謝システムの連動について,その局所原理と全体像を,異なる時空間スケール,すなわち,(1)微視的時空間スケールと(2)巨視的時空間スケールから統合的に解明することを目的としている。平成22年度,(1)に関しては,2光子顕微鏡を用いて,神経活動領域の微小循環系3次元構造を描出した。今回はマウスにおいてTexus Red(sulforhodamine 101)を静脈内に投与しこれを行った。血管検出は深さ約800μmまで可能であったが,600μmより深部においては血管径の定量的な計測が困難であった。また,脳表での血管内径が比較的大きい細動脈は表層付近での分岐は観察されなかったが,比較的小さい細動脈は表層での血管分岐を多数認めた。また,脳表細動脈から脳表細静脈に至る経路長は,終末細動脈からの分岐点の深さに依存して血液の循環経路が線形的に長くなる傾向が得られた。実際に、実質毛細血管領域における平均の経路長は~400μmであり平均分岐数は~7回であったことから、実質毛細血管一本の平均の長さは約60μmであった。これらの基礎的データは,脳虚血,加齢,アルツハイマー病などの病態に伴う脳実質の毛細血管密度の低下を検討する上で重要と考えられた。(2)については,多波長同時観察ユニット(Quad-View)を用いて3波長の反射光画像を同時に取得,画像間演算でヘモグロビンの濃度変化のマッピングを行ったものと局所電場電位(LFP)との関係性について,片側及び両側の後肢刺電気刺激を行って検討した。結果は,反対側反応と同側反応の両者の脳循環反応に線形的に相関したのは,高周波数の電場電位(gamma-band LFP)と多ユニット活動で低周波数のLFPとの相関は不良であった。
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